自分のこだわりを自分で語るのが気恥ずかしい社長へ――なぜプロの取材が必要なのか
COLUMN vol.06 — 2026.08.25

「うちの技術、ここが凄いんです」
そう言おうとして、言葉が喉の手前で止まった経験はありませんか。
私はこれまで、飲食店の店主から工務店の職人、整体院の院長、パーソナルジムのトレーナーまで、たくさんの経営者の方に取材でお会いしてきました。そこで気づいたことがあります。腕の良い人ほど、自分の凄さを自分の口では語りたがらないということです。
「自慢に聞こえるのが嫌だ」という感覚は、正しい
これは謙遜でも遠慮でもなく、ある種の職業倫理なのだと思います。
技術を磨いてきた人は、その技術がどれほど地道な積み重ねの上にあるかを、誰よりも知っています。だからこそ「うちはここが凄い」と胸を張って言い切ってしまうと、自分の実感とその言葉のあいだにズレが生じる。積み重ねてきた過程を知っているからこそ、結果だけを切り取って語ることに居心地の悪さを覚えるのです。
さらに、自分で自分を評価する言葉は、聞き手にどうしても「営業トーク」として受け取られやすいという事実もあります。本当は誠実に伝えたいだけなのに、自分の口から出た瞬間に、それが自慢話や宣伝文句に変換されてしまう。真面目な人ほど、このねじれに敏感です。
だから多くの経営者は、ホームページのプロフィール欄を当たり障りのない一文で済ませてしまいます。本当はもっと語れることがあるのに、語らないままにしている。私はこれを、とてももったいないことだと感じています。

第三者が「聞く」だけで、同じ話がまったく違って伝わる
ここで力を発揮するのが、客観的な第三者、つまりインタビュアーの存在です。
同じ内容でも、本人が「うちはこれが強みです」と言うのと、取材者が「なぜそこまでこだわるんですか」と尋ね、経営者がそれに答える形で語るのとでは、読み手に届く印象がまったく違います。前者は主張ですが、後者は証言だからです。
インタビューという構造は、いわば「質問」というワンクッションを挟むことで、こだわりや技術力を自慢ではなく「事実への応答」に変換します。経営者は自慢したいのではなく、聞かれたから答えているだけ。この立ち位置の違いが、いやらしさをゼロにしたまま、本物の熱量だけを取り出すことを可能にします。
しかも第三者は、本人が「当たり前すぎて話すまでもない」と思っていることにこそ価値を見出します。長年その仕事をしてきた人にとっての常識は、外部の人間にとっては驚きであることが少なくありません。取材者がその温度差に気づき、「それ、もっと詳しく聞かせてください」と掘り下げることで、本人も忘れていたような原点のエピソードや、言葉にしたことのなかった哲学が、自然と表に出てきます。私自身、取材の現場で「そんなこと聞かれたの初めてです」と驚かれることが何度もありました。
語られた言葉には、品格が宿る
もうひとつ大切なのは、質問に答える形で出てきた言葉は、答えている本人の人柄や間まで含めて記録できるということです。
台本を用意して一人で語る言葉は、どうしても整いすぎて、よそ行きの顔になりがちです。一方で、質問に答える形で紡がれた言葉には、考えながら話す間や、言い淀み、ふと出た本音が残ります。それこそが、読み手が「この人は信頼できそうだ」と感じる品格につながるのだと、私は現場で何度も実感してきました。

「自分で喋らなくていい」なら、頼んでみようと思えるはずです
もし今、あなたが「うちの良さを伝えたいけれど、自分で語るのは気恥ずかしい」と感じているなら、それは決してあなたの弱さではありません。むしろ、自分の仕事に対する誠実さの表れだと、私は思います。
だからこそ、その役目は自分で背負い込まなくていいのです。あなたがすべきことは、聞かれたことに、いつも通り正直に答えるだけ。こだわりを言語化し、自慢に聞こえない形に整えて届けるのは、こちら側の仕事です。
「自分で喋らなくていいなら、一度頼んでみようかな」
そう思っていただけたなら、まずは一度お話を聞かせてください。あなたが当たり前だと思っている仕事の中に、まだ誰にも語られていない価値が、きっと眠っています。
金子浩之 / TINY PERK 横浜市金沢区を拠点に、映像制作者として活動しています。 アパレル業界15年→2023年フリーランスへ転身。