✍ COLUMN
2026.05.01
COLUMN vol.03 — 2026.05.01
「TINY PERK」という名前は、自分でつけておきながら、いまだに気に入っている。
フリーランスになると決めたとき、屋号をどうするかをけっこう悩んだ。かっこいい名前、覚えやすい名前、検索に引っかかる名前。いろんな軸があって、それを全部満たすのはなかなか難しかった。
そのうち、「名前から入るのをやめよう」と思った。先に、自分が何をやりたいかを言葉にした方がいい気がした。
フリーランスになった理由のひとつに、「大きくなくていい」という気持ちがある。
アパレルで働いていたとき、仕事はやりがいがあったし、楽しい部分もたくさんあった。でも、どんなに現場で工夫しても、大きな会社の方針や数字の論理で動く場面が多くて、「これは本当に誰のためになってるんだろう」と感じることも正直あった。
映像の仕事を始めたとき、まず決めたのは「小さくてもいいから、本物をつくる」ということだった。バズらなくていい。有名にならなくていい。ただ、頼んでくれた人が「これで良かった」と思える映像を、ちゃんとつくる。それだけでいい。
この「小さくても本物を。」というのが、TINY PERKのいちばん根っこにある考え方だ。
名前は、その考え方から逆算してできた。
「TINY」は、小さい、という意味だ。規模が小さいとか、力が弱い、という意味ではなくて、「大きくすることを目的にしていない」という宣言のようなものとして使っている。大企業じゃなくていい。SNSのフォロワーが何万人もいなくていい。届けたい人に、ちゃんと届けばいい。
「PERK」は、英語で「特権」とか「ちょっとした特典」というような意味がある。コーヒーが「ぽこぽこ」と沸き立つ音から来ている「percolate(パーコレート)」の略語として使われることもある。「perk up」で「元気になる」「気持ちが上がる」という意味にもなる。
この「perk」という言葉が好きだった。コーヒーが立てる、静かな音。その映像が浮かぶ感じ。大きな音じゃなくて、小さくてもちゃんとある音。それが自分のやりたいことに近い気がした。
TINY PERK、と声に出すと、なんか収まりがいい。音の感じが好きだというのも正直ある。
でも、それよりも、「小さくても本物を。」という気持ちを、毎回仕事をするたびに思い出せるような名前にしたかった。
金沢区という、ちょっとだけ知られていない場所で、一人でやっている。大きなスタジオも、大きな機材も、大きなチームもない。それでも、ちゃんとしたものをつくる。そのための名前として、TINY PERKはよくできていると思っている。
自分でつけた名前を、自分でほめるのも変な話だけれど。
金子浩之 / TINY PERK
横浜市金沢区を拠点に、映像制作者として活動中。アパレル業界15年→2023年フリーランスへ転身。